がん治療費の負担を軽減!初心者向け高額療養費制度のしくみ
がんと診断された時、検査や治療についての不安だけでなく、経済的な不安を感じることはありませんか?
がん治療には、高額な医療費がかかることがよく知られています。
そんな時に役立つのが高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)です。
今回は、4回にわたり、高額療養費の基本から、皆さんに知っておいてほしいお得な使い方を解説していきます。
高額療養費とは?
まず、高額療養費制度という名前は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的な仕組みを知らない方も多いでしょう。この制度は、日本の医療費負担を軽減するための制度で、病院や薬の費用が高額になった時に、一定の金額を超えた部分については、国が支援してくれるものです。
簡単に言うと、「医療費が高すぎる時に、一部を国が助けてくれる制度」です。
どのような仕組みなのかを順を追ってご説明します。
詳しく知りたい方は、高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省ホームページ)も合わせてご覧ください。
こんなにも医療費を抑えてくれる制度です
まず、実際にかかった医療費を100万円とします。・・・①
みなさんが、窓口で支払われる金額は3割負担ですので、30万円となります。・・・②
では、高額療養費で返ってくる金額はいくらなのでしょうか?
年収370~770万円の方場合の計算式に当てはめてみましょう。
80,100円+(100万円―267,000円)×1%=87,430円・・・③
この計算式は難しいので、覚える必要はありません。
「医療費の上限額があるんだな」のイメージができれば十分です。
窓口ですでに30万円支払っているので②―③ となり、
30万円―87,430円=212,570円が2~3か月後に払い戻しされる・・・④
という仕組みです。
結果、実際の自己負担額は、87,430円となるわけです・・・⑤
つまり、ひと月(月の初めから月末まで)に87,430円以上の治療費がかかったとしても、その超えた部分は国がカバーしてくれるという事です。
この制度は年齢と収入によって異なります。
年齢と収入で変わる自己負担額の計算方法
今回は、69歳以下の方について詳しく説明していきます。
69歳以下の場合、医療費の計算は年収によってア~オの5段階に分かれています。
あなたの医療費の上限額はいくらでしょうか?
同じ治療を行っていても医療費は人それぞれなので、自分の医療費を知ることは大事ですね。
高額療養費制度の申請はどのようにするの?
1.治療を行う方が加入されている健康保険から「高額療養費支給申請書」をもらいます。
健康保険の確認方法
健康保険証に記載されているか、マイナンバーカードの情報の中に入っています。
国民健康保険の方は住んでいる(記載されている)自治体の窓口になります。
全国健康保険協会(通称協会けんぽ)はホームページより
健康保険組合や共済は各窓口やホームページより申請用紙を取り寄せることができます。
2.必要事項を記入し、領収書とともに健康保険組合や市区町村の保険担当部署に提出します。
3.提出された書類を基に審査が行われ、認められれば一定期間後(2~3か月後)に支給されます。
高額療養費の注意点
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すべての医療費が対象ですか?
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食事代や個室の差額ベッド代・オムツ代やテレビカードなどは、この制度には含まれていません。健康保険適用の医療費(手術や薬代、検査費用など)が対象です。詳しくはかかっている病院の会計窓口などでご確認ください。
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がん治療のため仕事を減らしました。収入が減ったので高額療養費の区分も下がりますか?
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治療で休職などにより給与が急に減ったとしても、前年度の所得区分で計算されるため、すぐに限度額が下がることはありません。(国民健康保険の場合)
会社員など社会保険の場合は4~6月の給与を基に標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)という金額で高額療養費の区分が決まるため、すぐに限度額が下がることはありません。
休職中の方は医療費以外に収入が減ることの不安も生じていませんか?
「収入が減って医療費がかかり、これからの生活が不安です」という方は、患者家計サポート協会の無料相談会をご利用ください。
働く世代の患者さんやご家族からのこれからのお金の見通しを立てたいというご相談が増えています。
高額療養費制度というのは払い戻しの仕組みでもあるため、一度は会計窓口で3割負担(69歳以下の場合)を立て替え払いしなくてはいけませんので、医療費以外の日々の支払いや生活は大丈夫かな?と考えていくことも大事です。
立替払いをしなくて良い限度額適用認定証(げんどがくてきようにんていしょう)については「がん治療の支払いが心配…病院での医療費を最小限にできる方法」も合わせてご覧ください。
ただ、突然の治療で限度額適用認定証が間に合わない場合には、今回お伝えした高額療養費の申請を速やかに行えると良いですね。
高額療養費制度を利用するメリット
高額療養費制度はがんの手術や長期の治療が必要な場合に非常に役立ちます。
何より、医療費の心配をせずに治療に専念できるようになります。
ご自分の健康と生活の質を守るために、ぜひこの高額療養費制度について知っておいてくださいね。
直近11カ月(当月合わせて1年間)の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下がるというしくみ「多数回該当」もあります。
まずはご自分が、年収区分のア~オのどこにあたるのか確認してみましょう。
分からないと思われる方は、気軽に私たちに相談してみてください。
次回は、「知って得する利用方法について」もう少し詳しく説明していきます。
執筆者 AFP認定者 倍本 恵美子
監修 CFP認定者 黒田 ちはる
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「がん治療が始まるときに考えておきたい困らないための対策」を一緒に考えています。