がん治療が長くても安心できる、医療費負担を軽減するしくみを知ろう!
がん治療が始まるとき、高額治療費制度があるとはいえ、『この金額がこのままずっと続くと治療が続けられるか不安です』という声を相談の中でよく耳にします。がん治療は費用が高く、長期にわたることが多いため、高額療養費制度を利用しても毎月の医療費の負担がのしかかります。そこで今回は医療費が軽減されるしくみ「多数回該当」についてわかりやすく解説いたします。
多数回該当になると、どのくらい費用が軽減されるのか?
「多数回該当」とは、直近11カ月(当月合わせて1年間)の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下がるというしくみです。
これにより、長期にわたって治療が必要な場合でも、家計に大きな負担をかけずに医療を受けることができます。
70歳以上と69歳以下の場合では変わりますので、「年齢」「年収区分」にてご自身の多数回該当の金額をご確認ください。
ちょっとややこしい月のカウントの方法
次に、多数回該当となる月の数え方について、ご説明します。
例えば、69歳以下で所得区分「エ」の方の限度額は、57,600円です。
1月にがん治療を受け、3割負担で60,000円の医療費の場合、高額療養費により57,600円になります。(1回目)
同様に4月の治療で76,000円の医療費でしたが57,600円(2回目)、9月にも90,000円の医療費で57,000円(3回目)となります。
この場合、4回目の12月からは多数回該当となり、自己負担額がさらに軽減されます。つまり、12月の直近11ヶ月(1月~11月)で高額療養費に3回該当すれば、4回目が多数回該当となるという事です。
多数回該当のよくある質問と注意点
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ひと月の中で複数の病院や、入院と外来の場合などは2回とカウントできますか?
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回数で表現されているので混同しやすいのですが、ひと月に高額療養費が複数回達したとしても、「1回」としてカウントされます。
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①多数回該当に一度でも該当したらずっと適用されますか?
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次の月には直近11ヶ月はスライドしていきますので、3回高額療養費に達していない月は多数回該当にはなりません。
先ほどの例ですと、次の年の1月になると、直近11ヶ月は(2月~12月)とスライドしていきます。
長期間治療を行っている方は、毎回多数回該当が適用されるとは限らないため、ご注意ください。
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②多数回該当に一度でも該当したらずっと適用されますか?
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健康保険が変わると回数がリセットされます。
会社員の方で、退職後「国民健康保険」や「配偶者の扶養に入られる場合」は、これまでの回数がリセットされますので、退職を考えられる際は健康保険料と医療費両方で検討されることをお勧めします。退職後にどの健康保険に入ったら良いかの判断が難しい場合は当協会の無料相談会で情報整理をお手伝いしております。お気軽にご利用ください。
退職後の健康保険の選択のご相談では確認事項がありますので、退職前のお時間に余裕を持った時期にご予約されることをお勧めしています。
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多数回該当にならないことはありますか?
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年収が高く、高額療養費の自己負担限度額が高い区分(特に「ア」「イ」)の場合は医療費が高額療養費に達せず、ずっと3割負担のままという方もいました。例えば、年収770万円以上の方の場合、3割負担で16万円の分子標的薬を使用したケースでは、上限額(167,000円)に達しないため、多数回該当が適用されず、4回目以降もずっと同じ額(16万円)になってしまうということがありました。
事前に医療費の予測ができることで、安心につながります
多数回該当は、長期間にわたって高額な治療費が必要な患者さんやご家族にとって非常に重要な制度です。
医療費が高額になると家計に大きな負担がかかりますが、この制度を事前に理解しておくことで、少しでも負担が軽減できると安心していただけると嬉しいです。
治療が長期になりそうなときは、医療費だけでなく収入が減ることも不安の一つです。
収入サポートできる制度やしくみがあるかは個人個人変わってきますので、これからのお金の見通しを立てたい場合には、ぜひ私たち患者家計サポート協会へご相談ください。
次回は、シリーズ最後、知らないと損するお得な「世帯合算とは?」について解説します。
執筆者 AFP認定者 倍本 恵美子
監修 CFP認定者 黒田 ちはる
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