がん治療中に何ヶ所も医療費がかかったとき、まとめて負担を軽くする方法
がんの治療中には、「今月は複数の病院で医療費が発生して、家計が厳しい」という声も多く聞かれます。
実は、要件を満たす場合、複数の医療費を合算して負担額を軽減し、一部の医療費を取り戻すことができるしくみがあるのをご存じですか?
医療費領収書を手元に準備して確認してみましょう。
まずは、医療費の基本となる「高額療養費制度」についておさらいしていきます。
高額療養費制度とは
医療費が高額な場合、一部を国が負担してくれる制度です。
詳しい内容は「がん治療費の負担を軽減!初心者向け高額療養費制度のしくみ」をご覧ください。
たとえ3割負担でも大きな金額を一度に支払う必要があるため、「限度額適用認定証」や「マイナ保険証」を使うと、窓口払いが軽減されます。
「がん治療の支払いが心配…病院での医療費を最小限にできる方法」も合わせてご覧ください。
がん治療は長期間におよぶことが多く、高額療養費制度を利用しても毎月の医療費の負担が重くのしかかります。長期間治療が続く場合には、医療費が軽減されるしくみ「多数回該当」があります。
医療費を「まとめる」世帯合算を有効活用しましょう
世帯合算とは、同一世帯で同じ月に複数の医療機関で支払った医療費を合算して申請すると自己負担額を超えた分が返ってくるお得な制度です。
また、ひとりの場合でも同じ月に複数の医療機関に自己負担限度額を超える医療費を支払った場合、それらを合算して申請することができます。
69歳以下の方の場合は、医療費(健康保険適用)の自己負担が2万1千円以上であれば合算が可能です。
この場合の世帯とは、同一の医療保険に加入する家族を単位として行われます。一般のイメージの世帯とは異なりますのでご注意ください。
◯世帯に該当する例◯
・健康保険組合に加入している夫と扶養されている妻
・国民健康保険に加入している夫と妻 など
✖世帯にはなりません✖
・健康保険組合の夫と全国健康保険協会(協会けんぽ)の妻
・国民健康保険に加入している父と健康保険組合に加入している息子
・全国健康保険協会の息子と後期高齢者医療保険に加入している母 など
世帯合算の実例①夫と妻の医療費を合算する場合
夫が扶養者(家族・親族を養う人)、妻が被扶養者(扶養されている人)の例でご説明します。
この場合、夫の入院費は6万円なので合算が可能です。
妻の外来通院治療と外来で処方された調剤薬局の薬が5千円の場合、両方を合算できるので合計は5万円となり合算が可能です。
しかし、歯科でかかった医療費は3千円(3割負担)で、2万1千円に達していないため、歯科の治療費は合算されません。
一人では8万円台に達しないため、高額療養費は適用されませんが、このように世帯合算を行うことで6万円と5万円を合計した11万円は高額療養費で再計算され、自己負担限度額以上の金額が返ってくることになります。
世帯合算の実例②ひとりでの世帯合算の場合
世帯合算は家族との合算だけではなく、ひとりでもひと月に2つ以上の医療機関でそれぞれ2万1千円以上自己負担があった場合かかった費用を合算することができます。そして、図のように同じ医療機関の入院と通院で治療が行われた場合も合算できることがあります。
がん治療の場合、入院治療を終えた後に通院で放射線治療や抗がん剤治療を始める方もいるので、このような一人でも合算できるケースがあります。確認してみましょう。
世帯合算はここに注意!
1.加入している健康保険によっては手続きが必要!
健康保険組合や公務員の共済などは、自動的に処理してくれるところもあります。
しかし、全国健康保険協会(通称:協会けんぽ)の方は、申請しないと返金されないことがあります。
まずは、ご自身の加入されている健康保険のホームページを確認してみてください。
2.時効に注意!
健康保険の手続きに関しては時効が2年です。
取り戻せる医療費があるかを、まずは確認してみましょう。
中には世帯合算の存在を知らずに高額な医療費に対して医療費控除を先に行っている方もいますが、後々世帯合算で医療費の戻りがあった場合には再度確定申告にて税金の修正が必要になるため、医療費の手続きの順番には気を付けましょう。
世帯合算や利用できる制度を最大限活用していくために
世帯合算は、長期間にわたって治療が必要な患者さんやご家族の治療費を合算することができる非常にお得な制度です。今年の治療費を見返して、合算される月が無かったか確かめてみることをおすすめします。
制度のしくみは複雑です。
どのように進めた方が良いか不安な方や、他にも利用できそうな制度やお金のしくみが知りたいという方は、専門家が無料相談会にてお話を伺っています。お気軽にご利用ください。
執筆者 AFP認定者 倍本 恵美子
監修 CFP認定者 黒田 ちはる
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