がんで仕事を休む前に知っておきたい傷病手当金の金額と注意点
がん患者さんが療養のために仕事を休む時、収入が途切れないと安心です。
会社員や公務員など、勤務先で健康保険に加入している場合には、「傷病手当金」の制度によって、通算して最長1年6カ月まで審査に通れば収入が確保されます。
では、金額はいくらなのでしょうか。
今回は、傷病手当金で受け取れる金額と、計算方法についてお伝えします。
傷病手当金は、給料の約3分の2
支給される傷病手当金の金額は、下記の式で計算されます。
1日あたりの金額
支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額※を平均した額÷30日×(2÷3)
標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)とは?
傷病手当金や年金の計算の基となる金額です。
会社から受ける基本給に、役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えた1カ月の総支給額(ボーナスなどを除いたもの)を「報酬月額」といい、保険料額表の等級に該当する金額のことを「標準報酬月額」といいます。
継続して働いている方は、基本的に毎年4月、5月、6月の支払基礎日数17日に受けた報酬をもとに標準報酬月額を決定します(定時決定)。その年の9月から翌年の8月まで使用します。(参考:日本年金機構HP)
つまり、直近1年分の標準報酬月額の、約3分の2です。
1月から傷病手当金を受け取る場合を考えてみましょう。

12カ月間の標準報酬月額の平均が30万円だったとしたら、1日あたり6,667円です。
30万円÷30日×(2÷3)=6,667円(小数点以下四捨五入)
31日分受け取るとすると、20万6677円が傷病手当金の金額です。
計算式はややこしいのですが、およそ標準報酬月額の3分の2であることがわかります。
もしも過去12カ月に報酬のない日があったら?
もし、1年以内に転職するなどして、給与などの報酬のない月があった場合には、次の①か②のいずれか少ない額を用いて計算します。
① 直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
② 前年度の9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均
(協会けんぽの場合は30万円)
やはり、標準報酬月額の約3分の2と考えてよいでしょう。
額面と手取りは違うの?
給与を勤務先から受け取る場合、社会保険料や税金が差し引かれていると思います。
それは、勤務先が個人に代わって保険料や税金を払っておいてくれるからです。
傷病手当金は給与と異なり、勤務先からではなく、社会保険からの支給です。
ですから、社会保険料や税金は、勤務先などへ払う必要があります。
傷病手当金は非課税なので、所得税・住民税はかかりません。
ただし、前年の所得に対する住民税を納める必要があります。
金額は、それまでの給与明細を確認すればわかります。
請求されても、慌てずに対処できるようにしておきましょう。
がん治療中の生活費は、傷病手当金を基にしっかり考えよう
傷病手当金を基に、生活の見通しは立てられそうでしょうか?
がん治療を安心して続けていくためには、治療の見通しとあわせて、家計の見通しを立てることが大切です。
今後の生活に対する不安を少しでも軽減できるよう、早めに収入と支出のバランスを考えておきましょう。
貯蓄や、民間のがん保険・医療保険の給付金などをうまく活用していくことにもつながります。
医療費や生活費をどう支払っていこうか考えている方は、お気軽に「患者家計サポート協会」にご相談ください。
専門相談員がこれからのお金のことを一緒に考えています。
執筆者:松川 紀代(AFP認定者)
監修者:黒田 ちはる(CFP®認定者)
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