がん患者のための税金ガイド【生命保険編】|給付金・控除・非課税のしくみを解説

保険は、病気やけがのときに助けてくれるだけでなく、税金にも関係していることがあります。保険料を支払う時には税制上の優遇を受けられる場合があり、逆に保険金や給付金を受け取った時には課税対象となって税金がかかることもあります。
がん患者さんにとっても、給付金・保険金だけではなく、税金も要チェックです。
今回は「払う時」と「受け取る時」の2つの視点で整理してみましょう。

保険料を払ったときの税金

生命保険や医療保険の保険料を支払うと、税金が少し安くなるしくみがあります。
この所得控除が、生命保険料控除です。

生命保険料控除には3つの区分があります。
① 新生命保険料控除(生命保険など)
② 介護医療保険料控除(医療保障や介護保障)
③ 個人年金保険料控除(一定の条件を満たす年金保険)

1年間に払った保険料の額に応じて、最大でそれぞれ所得税4万円・住民税2.8万円まで控除が可能です。
3つを合計すると、所得税で12万円、住民税で7万円弱が控除の対象になります(2012年1月1日以降契約分)。

控除を受けると、その分課税所得が下がり、結果として税金が安くなります。
毎年秋頃に届く「生命保険料控除証明書」を会社に提出したり、確定申告に添付したりすることが必要です。
証明書はなくさないよう、しっかり保管しておきましょう。

支払った保険料の全部ではないけれど、一部税金が戻ってくるのはありがたいしくみですね。

保険金などを受け取った時

保険金や給付金を受け取ったときは、その種類によって税金がかかるかどうかが変わります。

入院給付金や手術給付金、がん診断一時金

非課税なので、税金はかかりません。

ただし、気を付けなくてはならないのが、医療費控除を申告する場合です。
医療費控除とは、1年間(その年の1月~12月)に、医療費を一定以上(10万円もしくは所得の5%の少ない金額)を払った場合に、所得税と住民税が安くなる仕組みです。

この場合の「医療費」とは、実際に負担した金額です。
つまり、医療保険からの給付金は医療費の一部をカバーしているので、その分は引いて計算するということです。

たとえば、入院費10万円に対して、入院給付金を3万円受け取ったら、医療費控除の対象になるのは、差額の7万円です。
ただし、診断一時金は入院費の補てんではないので、差し引かなくて大丈夫です。
給付金は税金はかからないけれど、医療費控除を二重に利用することはできない、という仕組みになっています。

満期保険金や解約返戻金

保険が満期になったときや、亡くなった人の保険金を受け取るときは、誰が受け取るかや契約の内容によって、税金がかかることがあります。

契約者=受取人の場合には、基本的に一時所得として所得税の対象です。
課税対象額は、以下の計算式で求めます。
受け取った金額 − 払込保険料 − 特別控除50万円)÷2

契約者と受取人が異なる場合には、贈与税の対象です。

死亡保険金

契約者、被保険者、受取人の関係によって、かかる税金が変わります。

今回は例として、「夫」「妻」「子」のケースをご紹介します。

※具体的な疑問に関しては、税理士に確認されることをお勧めします。

契約者=被保険者、受取人が法定相続人の場合には、相続税の対象です。
契約者と被保険者が異なり、契約者=受取人の場合には、所得税の対象です。
契約者、被保険者、受取人がそれぞれに異なる場合には、贈与税の対象です。

税金がかかる場合でも、一定の非課税枠や控除が設けられているため、実際に納める税額はケースごとに異なります。

まとめ

生命保険や医療保険は、万が一に備えるだけでなく、税制上のメリットを受けられる仕組みでもあります。
保険料を払う時には生命保険料控除、給付金・保険金を受け取る時には、課税される種類と金額に注目するのがポイントです。

同じ保険契約でも、受取人や使い方によって税金の扱いが変わることがあります。
迷った時は、税理士やファイナンシャルプランナーに確認してみましょう。

執筆者:松川 紀代(AFP、一般社団法人患者家計サポート協会)

監修者:黒田 ちはる(CFP、一般社団法人患者家計サポート協会)

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