がん治療中、確定申告の「医療費控除」のメリットとは?

税金のこととなると、確定申告の医療費控除(いりょうひこうじょ)に限らず、なんだか難しそうで避けてしまいがち。

しかし、高額な医療費を支払い続けているがん患者さんにとって、医療費控除と自分の医療費がどう関係しているのか、知っておくことはとても大切です。

医療費控除の対象と、実際どれくらい負担を減らせるのか、具体的に見ていきましょう。

医療費控除ってどんな制度?

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費などが、一定の金額を超えた場合に利用できる所得控除のことです。
所得控除によって節税できるので、会社員の場合は払い過ぎた税金を戻すことができます。

医療費控除ってどんなものが対象になるの?

ここからは、がん患者さんからよく聞かれる医療費控除の質問6つにお答えしながら解説していきます。

出典「確定申告書の書き方」(国税庁)
  1. いつ支払った医療費が対象?
  2. 医療費控除はいくら?
  3. 家族の分をまとめていいの?
  4. 何が医療費控除の対象?
  5. 申告できる人は?
  6. 医療保険、がん保険の給付金は?

① いつ支払った医療費が対象?

1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象です。
この期間に受診していても、支払いをしていなければ対象にはなりません。
現実に支払った年の医療費控除の対象となります。

② 医療費控除はいくら?

10万円(所得200万円未満は所得合計金額×5%)を超えた金額で、最高200万円です。

③ 家族の分をまとめていいの?

自分と同一生計の家族のために支払った医療費も、まとめて申告できます。

④ 何が医療費控除の対象?

これって医療費控除の対象? と疑問に思われがちなものをまとめました。

国税庁ホームページより筆者作成

*人間ドック・健康診断の費用:重大な病気が発見され治療を行った場合は対象
*タクシー代:公共交通機関での通院が困難な場合に限って対象(領収書があったほうがよい)

⑤ 申告できる人は?

税金を納めている人です。
例えば、5月からがん治療のため休職し傷病手当金を受給されている場合、傷病手当金は非課税ですので戻ってくる税金はありませんが、1~4月まで働いてて所得税が引かれている場合は、その引かれた部分の一部が戻ってくる可能性があります。

もし、住宅ローン減税などで所得税が0円になった場合でも、住民税のほうで医療費控除を受けられます。

収入だけでは判断が難しいため、家族の中で誰が申告したら良いかの判断に迷った場合には、無料相談会にてご確認いただければと思います。

⑥ 医療保険、がん保険の給付金が入った場合は?

生命保険等の入院給付金、高額療養費、家族療養費などは、その給付内容に対応する医療費から差し引きます。

例:入院費を4万円支払い、保険会社からの入院給付金を5万円受け取った場合
→入院費から給付金を差し引きます。

引ききれなくても、医療費総額から差し引く必要はありません。

がん保険の診断給付金や、就業不能保険の給付金

「がんと診断されたら100万円」という診断給付金や、「働けない場合」の就業不能保険の給付金に関しては、治療のためだけではない給付金なので、基本的には医療費から差し引く必要はありません。どのような給付内容なのかを確認しましょう。

保険の給付金が確定申告までにわからない場合

見込み額で申告します。
ただし、給付金の額が見込み額と異なっている場合には、訂正しなければいけませんので、可能ならば確定申告の前にがん保険、医療保険の給付金は請求しておくことをお勧めします。

医療費控除でどれくらい戻ってくるの?

下の①②の計算式で出された金額が、払い戻される目安です。

計算式 

①(年間医療費―給付金などー10万円または所得合計の5%)

② ①の金額×税率=払い戻される金額(還付金額)

計算例  年間医療費100万円 医療保険からの給付金20万円

【所得合計金額  300万円の場合(税率10%)】

  • 100万円―20万円―10万円=70万円
  • 70万円×10%=7万円が戻ってくる

同じ医療費の金額だとしても、申告される方の所得によって、戻ってくる税金が違うことや、税金の一部が戻ってくるということがポイントです。

【所得合計金額  150万円の場合(税率5%)】

  •  100万円―20万円―(150万円×5%)=72万5000円
  •  72万5000円×5%=3万6250円が戻ってくる

まずは領収証の保存から

確定申告が初めての方は、まずは医療費控除の対象となる医療費を確認し、領収書を「利用した人」「医療機関」別に整理しておきましょう。
領収書自体は確定申告で提出する必要はありませんが、明細書の記入内容の確認のため、確定申告から5年間、税務署から提示又は提出を求められる場合がありますので、領収書はご自宅等で保管しておきましょう。

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執筆者 AFP認定者 長谷部 滋子
監修  AFP認定者 松川 紀代

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