9/14(土)の医療者向けオンライン勉強会は好評でしたのでまた企画します!
患者さんを取り巻く経済的な問題「経済毒性」
がん治療の進歩により生存率は改善している一方で、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など長期間の使用を必要とする薬剤も増えています。
そのため、高額療養費制度を利用しても毎月の医療費負担が依然として大きく、さらに収入減少も重なることで、治療の継続や生活に不安を感じる「がん治療における経済毒性」が日本でも深刻化しています。近年の研究で、この問題が明らかになってきました。
愛知県がんセンターの本多和典先生(2018)や、北海道大学の白土博樹教授(2022)の研究では、経済毒性の実情とその評価が述べられています。これらの研究に基づき、2023年の第20回日本臨床腫瘍学会学術集会でも、FP(ファイナンシャルプランナー)の介入が一つの解決策としてご紹介されました。
「学会リポート◎日本臨床腫瘍学会2023
がん治療の「経済毒性」を知っていますか?
経済的な負担は治療成績や患者・家族のQOLにも悪影響を与える」(日経メディカルOncologyリポート)
2023年および2024年には、乳癌学会、泌尿器科学会、癌治療学会でも経済毒性が取り上げられ、医療従事者の間でもこの問題に対する関心が広がりつつあります。
また、同学術集会では、「日本におけるがん治療に伴う経済毒性の実情と対応策」というテーマで、本多和典先生と共に、当法人の代表理事である黒田ちはるが、がん患者さんの家計相談の実例を踏まえ、FPの活用の有効性について述べました。
就労世代の大きな問題:収入の低下
治療と仕事の両立支援や傷病手当金、障害年金などの制度を利用しても、収入の減少は避けられず、多くの患者と家族が生活維持に苦しんでいます。
解決策はこの3つ!
多くの医療機関では、公的制度の説明や就労支援に取り組んでいますが、家計支援には専門性が求められ、どの病院でも対応できるわけではありません。経済的な問題を抱える患者さんへの具体的なサポートは、以下の3つが鍵となります。
公的支援制度の活用: 高額療養費制度、傷病手当金、障害年金などの既存の制度をフルに活用し、患者さんにとって利用しやすい形で提供する。
就労支援:無理をせず働き続けられるための支援を行う。
家計相談の専門家との連携: 患者が経済的に困窮する前に、初期の段階でサポートが必要な患者を見極め、適切なタイミングで支援を行う。ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家と連携し、長期的な視点からのサポートを提供する。
医療従事者が抱える悩み
がん相談員としてどこまでお金のことを説明したら良いのか悩みます。
家計のことは専門外なので、相談できる専門の人がいれば…
どのFPに患者さんを紹介したら良いのかわからない
院内の相談支援センターにもあまり相談がありません。
うちの病院にも、困っている方はいるのかな?
どんな患者さんが悩んでいるのかわからない
実際、病院内に経済的に困っている患者さんがいるかどうかの把握が難しいという医療現場も少なくありません。
また、どの患者さんが具体的に経済的な問題に直面しているのかがわかりにくいため、適切な支援のタイミングを逃してしまうケースもあります。
そして具体的にどのように対処すべきかについては、悩みが多いのが現状です。
最も重要なのは、経済的な問題を早期に把握し、支援が必要な患者さんを早めに見つけることです。
患者さんの経済状況は、治療が始まりしばらく経ってから表面化することが多いのですが、そうなる前にリスクを認識し、適切なサポートにつなげることが、医療従事者としての重要な役割です。
【重要】経済面のスクリーニング
多くの病院でがん患者さんに対するスクリーニングが実施されていますが、経済的な不安に関しても効果的なスクリーニング方法があることをご存じでしょうか。
経済的な悩みは、他者から見えにくく、発見や適切なケアが遅れることが多々あります。
患者さんやご家族自身も、「これは不安なのか、それとも気にしすぎなのか」と判断するのが難しい場合も少なくありません。
だからこそ、経済面での不安を評価するツールの重要性が高まります。
がんと診断された患者さんには、かかりつけの医療機関で早期にスクリーニングを行い、結果に応じてがん相談支援センターで公的制度の利用を含めた相談を行うことで、多くの患者さんの不安が軽減されることが期待されます。
その一例として、愛知県がんセンターの本多和典医師が翻訳された日本語版のCOST質問紙が広く使用されています。
当協会でも、これまでの家計相談の経験をもとに、患者さんやご家族が今後のお金や生活と向き合うための独自の質問項目を開発し、実施しています。
このような評価ツールの導入にご興味のある病院・クリニック関係者の皆さまには、オンラインでの説明会を随時開催しております。
詳細については、お気軽にお問い合わせください。
医療従事者の介入が難しい患者さんのお金の問題をどうしていくか
がん相談支援センターが設置されていても、現状の制度説明や就労支援で手一杯になっている病院を多く見かけます。
さらに、相談員の人員が不足しているため、患者さんにしっかり説明したくても、対応が難しいという声も多く聞かれます。
人員が十分にいて、ワンストップで患者さんのお金に関する悩みに対応しようとしても、実際には解決が難しい場合もあります。
なぜお金の問題が難しいかというと、治療方針が患者さんやその家族の命に関わる大きな決断であるのと同様、お金の問題も患者さんやご家族の人生全体に大きな影響を与えるためです。
また、ある医療従事者からは「同じ制度やお金の説明でも、誰が説明するかで、患者さんが受ける利益に差が出ることがある」と伺いました。
このような状況から、患者支援を専門的に取り組んでいるFP(ファイナンシャル・プランナー)と協働している医療従事者の方々も増えています。
FPの中でも患者支援専門のFPとは?
現在、日本FP協会によると、NPO法人日本FP協会が認定するAFPやCFP®資格者は全国で約18万人います。しかし、そのうち生活設計のアドバイスを業として行っているのはわずか7%で、さらにその中に患者支援を行えるFPが含まれています。
一般的なFPの資格勉強では、病気に関する知識はリスク分野(がん保険や医療保険の入り方)として扱われますが、実際に病気になった後の生活設計に関する学びは追加での勉強が必要です。
このような高度な相談ができるFPは全国でも10名に満たず、そのうち3名が当法人に所属しています。
全国的にもまだ少ないため、ほぼオンラインで対応している状況です。
さらに、2024年度には、千葉市内のがん診療連携拠点病院で当協会FPによる家計相談会を定期開催することが決定しました。
医療機関と協働し、がん相談支援センター内での家計に関するお悩みにも対応できるよう準備を進めています。こういった相談会にご興味のある病院、クリニックの皆さまは、お気軽にお問い合わせください。
医療従事者向けのサポートについて
よくある質問
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どんなことが聞けますか?サポートしてくれますか?
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治療中にお金に関する悩みとして多いのは、「限られた収入での家計のやりくり」や「利用可能な公的制度に関する情報」です。
家計の具体的な内容には、住宅ローン、教育費、生命保険、各種ローン返済、相続などが含まれます。アドバンス・ケア・プランニングを進めるうえでも、経済的な問題は切り離せない重要なテーマです。また、医療ソーシャルワーカーが不足している病院やクリニック、在宅診療の場では、制度に関するサポートを行うことが難しいこともあります。
そのような場合、経験豊富なFPが補足説明を行い、患者さんをサポートすることが可能です。「この内容は相談できるのか?」といった確認も受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。オンライン対応のため、全国どこからでもご相談いただけます。
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患者さんの対象はありますか?
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今年度は、がん患者さんとそのご家族を対象としています。検査段階の不安な時期から、終末期、さらには遺族ケアまで対応可能です。
来年度以降はFPの人員拡充に伴い、難病や慢性疾患の患者さんにも対応していく予定ですが、現在どうしてもサポートが必要な場合は、個別にご相談ください。できる限りサポートいたします。
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なぜ無料なのですか?
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理由は3つあります。
1つ目は、FPの役割を多くの医療従事者の皆さまに知っていただきたいという目的です。
2つ目は、医療従事者の方が経済的な問題に関する知識を持つことで、全国の患者さんが「悩む前にキャッチ(スクリーニング)」され、救済の手を差し伸べられるからです。
3つ目は、助成金や寄付金での運営を目指しているためです(今年度はほぼボランティアで運営しています)。
このサポートが無償で提供できるのも、個人有志の方々や団体・企業様からの協賛と寄付のおかげです。皆さまのご理解とご支援に感謝申し上げます。
サポートが無償で運営できているのも、個人有志の方、団体・企業様からの協賛・寄付金のおかげです。皆さま、取り組みへご理解とご支援をありがとうございます。
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質問できないことはありますか?
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制度や経済的な情報の提供や選択肢の提示は可能ですが、それが実際に利用可能かどうかを判断するのは、審査機関の役割です。
たとえば、「傷病手当金や障害年金は受給可能ですか?」や「保険の給付金はどうすれば受け取れますか?」といった具体的な審査に関する質問にはお答えできませんが、過去の相談事例に基づく参考情報を提供することは可能です。
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どのように申し込めばよいですか?
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完全予約制ですので、下記の予約フォームからお申し込みください。
医療機関には多くご利用いただいておりますが、1医療機関につき1回/月のご利用となります。30分間の質問タイムがありますので、気になる制度やお金のことについてお気軽にご相談ください。
注)多くの医療・介護従事者の方々にご利用いただけるよう、初回のご利用者を優先させていただく場合があります。ご了承ください。
サポートの形式は3つ
サポートには、3つの形式があります。状況に応じてお選びいただけます。
1医療従事者の方のための質問タイム
「患者さんやご家族から経済的な悩みを相談されたが、どう対処すればよいかわからない」といったケースに対応します。30分間で複数の質問にお答え可能です。
2.患者さんとの三者面談形式
患者さんやご家族に直接アドバイスを提供したい場合、三者面談形式で対応いたします。
FPによるアドバイス後のフォローが必要な場合や、医療従事者の同席が望ましい場合に適しています。
3.患者さんやご家族に直接当法人の無料相談を受けていただく
「紹介できるFPはいませんか?」という要望に応じて、FPと患者さんやご家族が直接やり取りできる形式です。医療従事者の人員が不足している場合や、直接FPに相談した方が良い場合にご活用ください。患者さん向けの無料相談も提供しています。
医療従事者のためのサポートを受けるまでの流れ
- 1.お申込み
- 予約カレンダーより「名前(医療機関や所属名、担当者のお名前)、連絡先、聞きたい内容」を入力の上、お申込みください。
- 2.予約確定
- 予約確定メールが届きます。Zoom のURLをご確認ください。
- 3.サポート当日
- 通信環境の整った場所でご参加ください。
- 5.終了後アンケート
- 今後のサポート向上のため、アンケートにご協力いただけますと幸いです。
開催日とお申込みフォーム
送信されましたら、予約確定メールが届きます。
先着順となりますこと、ご了承ください。
下のカレンダーから相談可能日をクリックし、申込みフォームを入力して送信してください。
日付の下の赤丸の数字が残っているサポート枠です。0のところは満席です。
先着順の予約制です。
「戻る」を押すとカレンダーに戻ります。
フォーム送信後に自動返信メールが届きます。ご確認ください。
ID | 予約日時 | カレンダー | 状態 |
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医療機関での勉強会も実施しています
ご希望に応じてお話させていただいています。
お気軽にお問い合わせください。
患者家計サポート協会は患者支援のFP団体です。
FP(ファイナンシャル・プランナー)はお金の専門家ではありますが、何か商品を売りつけられるのでは?と聞かれることも…
ご安心ください。当協会は商品を売らない相談で医療現場でも社会的にも認められている非営利の団体です。
取材記事)「患者家計サポート協会」がん患者さんの「お金の不安」がなくなることを目標に
【今までの実績】
- 日本臨床腫瘍学会(がん専門医の学会)
- 千葉市内のがん診療連携拠点病院にてFP相談会の定期開催が決定
- 千葉大学医学部附属病院での医療従事者対象セミナー
- 世田谷区保健センターにてがん相談員向け研修
- 日本対がん協会と認定NPO法人がんサポートコミュニティー共催のがん患者支援の講義
- NHKラジオ、テレビ東京ワールドビジネスサテライト出演
- 朝日新聞掲載
- 日本対がん協会主催のがん患者支援イベント「ジャパンキャンサーサバイバーズデイ2024」にてブース出展、出張個別相談会実施
9/14(土)勉強会を行いました
参加希望の方はぜひご連絡ください。希望日を優先して企画してまいります。